発達障害児童の転校が認められず自治体に対して謝罪と補償を求める民事調停の申立て 自治体が謝罪に応じることはある?

事案の概要

岐阜県の大野町で、発達障害のある児童の学区外への転校が認められなかったとして、母親が町に謝罪と補償を求める調停を裁判所に申し立てたという報道がありました(“発達障害児転校認めず” 大野町に謝罪など求め調停申し立て 2022年11月22日 岐阜NEWS WEB)。

別の児童とのトラブルがきっかけで不登校となり、母親が別の小学校への転校を申し出たが、町の教育委員会が認めず、転居を余儀なくされたということです。

このため母親は、教育委員会側がトラブルに適切に対応しなかったことや、転校を認められず転居を余儀なくされたなどとして、町に対して謝罪と通院費等の補償を求める民事調停を申し立てています。

自治体は謝罪する?

謝罪を求める民事調停自体は可能ですが、自治体に対して謝罪を求めて対応してもらえることというのはそもそもあるのでしょうか。

謝罪が実現するかどうかは事案によりますが、民事調停で自治体が謝罪をした事例が見つかりました。
本件と同じような小学校での別児童との問題についての事案で、加害者からは既に謝罪があったが、市の対応や調査内容について民事調停を申し立てられた自治体が被害者を不安にさせたり、つらい思いをさせたことについて重ねて謝罪をするという和解に至った事案です。

自治体が民事調停で謝罪する旨の和解をするにあたっては、地方自治法96条1項12号により、議会の議決が必要となります。

普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。

十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(中略)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。

地方自治法96条1項

自治体が民事調停により謝罪した事例(宝塚市)

宝塚市のホームページで公表されている令和3年度の議案等一覧の中に、「和解することについて」という議案が存在します(個人情報等はマスキングされています)。
事件名は謝罪等請求調停事件です。

これは、市が和解をしようとするにあたり、地方自治法第96条第1項の規定により、議会の議決を求める旨の議案で、全員一致で可決されています。
以下、市により公表されている内容から一部引用します。

事案の概要

登校中、同じ学校の他の児童から背後からランドセルを押されるなどして、児童がPTSD、解離性障害、記憶障害などの複数の診断を受けるに至った。

押した児童側から被害児童への謝罪はなされたが、市がこの件について行った対応や調査内容等について、被害児童側と市との協議を行ったものの、被害児童側から市が作成した報告書の一部撤回等を求める調停が申し立てられた。

和解の要旨

  • 申立人主張のいじめ事案に関連して、申立人を不安にさせたことやPTSD・解離性障害を発症する等つらい思いをさせたことにつき謝罪する。
  • 学校内で安心して学習できる環境の整備を継続して行うよう務める
  • 集団登校班による通学路は、申立人に異なる希望があれば通学路を決める会等との協議によって定める
  • 清算条項