シェアハウスかぼちゃの馬車事件ではスルガ銀行と民事調停による柔軟な解決がなされた

かぼちゃの馬車事件とは

かぼちゃの馬車とはなにか

かぼちゃの馬車とは、不動産会社である株式会社スマートデイズが建設、運用主体となり展開していた女性用シェアハウスのブランド名です。

スマートデイズは、30年間の賃料保証(サブリース)と高い利回りをうたい、かぼちゃの馬車を購入する投資家を増やしていきました。

かぼちゃの馬車は一棟が1億円以上するシェアハウスなので、購入者は購入資金には銀行からの融資を利用することが必要となります。

購入者が融資を受けて物件をスムーズに購入できるよう、スマートデイズはスルガ銀行株式会社と提携し、スルガ銀行はかぼちゃの馬車の購入者に対して積極的な融資を行っていました。

何が問題だったのか

かぼちゃの馬車問題は、2018年に、スマートデイズが経営破綻し、サブリース契約による家賃をシェアハウスを購入した投資家に対して支払えなくなり、投資家たちが巨額の借入金をスルガ銀行に返済することができなくなったことで問題化しました。

投資家たちは、かぼちゃの馬車を売却して債務から逃れようとしても、実勢価格よりも大幅に高く購入していたことから残債務を消すことができる額での買い手を探すことも難しく、入居率も低かったことから自分が入居者と直接の賃貸借契約を行うことで収益を上げるということもできませんでした。

スルガ銀行の不正行為とは

そのような中で、スマートデイズと提携していたスルガ銀行がかぼちゃの馬車への融資に関して以下のような不正行為を行っていたことが発覚しました。

  • 不動産関連業者が賃料や入居率を実勢よりも高く想定し、もしくは実績値よりも高い数値に改ざんした上、収益還元法で割り増して不動産価格を算出しているのに、その価格に基づいて多額の融資を実行
  • スルガ銀行での融資審査を通すため、不動産関連業者が自己資金のない人については、預金通帳の残高の改ざんや、口座へ所要自己資金の振り込み(見せ金)、一定の年収基準を満たすよう債務者の所得確認資料の改ざん、売買契約書の二重作成をしていた
  • スルガ銀行審査部では資料の改ざん等の情報があった不動産関連業者を取扱い停止にしたにもかかわらず、スルガ銀行の営業店では、資料改ざんを知りながら取引継続を企図して、取扱い停止となった業者に新たな不動産関連業者設立を持ちかけるなど、迂回取引を行って不正行為を継続・助長させていた

スルガ銀行は、これを受けて、銀行法第26条第1項に基づき、金融庁から半年間の新規の投資用不動産融資の停止する等の命令を受けることとなりました(参考:スルガ銀行株式会社に対する行政処分について 金融庁HP報道発表資料)。

また、一連の事案の経営責任を取るということでスルガ銀行では取締役5名も辞任しています。

民事調停の成立

スルガ銀行は、シェアハウス関連融資で民事調停を申し立てていた債務者と2020年から数次にわたり調停に応じ、2022年には4回目となる105人を合わせ、計1051人と総額1655億円分の代物弁済での調停に応じました(スルガ銀行、シェアハウス問題終結 弁済調停すべて成立へ 2022年9月27日 あなたの静岡新聞)。

不動産関連業者とスルガ銀行との不正行為により、本来よりも高い価格で投資家が購入させられていたシェアハウスを、スルガ銀行側がすべて引き取り、代わりに投資家がスルガ銀行に負うローン残高を帳消しにするという内容で調停が成立したのです。

民事調停が使われた理由

スルガ銀行は、投資家がかぼちゃの馬車を購入するにあたり、融資をして金銭消費貸借契約の当事者となりましたが、かぼちゃの馬車を売ったのはスルガ銀行ではなくスマートデイズです。

裁判でスルガ銀行に不正があったとしてスルガ銀行との金銭消費貸借契約の無効を主張し、仮に無効となった場合、残債務はなくなりますが、受けた融資を返すという問題が出てきてしまいます。

他方、かぼちゃの馬車の売主スマートデイズは、経営破綻して2018年には破産手続が開始されたため、投資家たちはスマートデイズに対する民事責任を追及して回収をはかることは困難となりました。

このような背景から、スルガ銀行に対しては、柔軟に解決方法を探ることができる方法である民事調停が申し立てられ、金銭消費貸借契約の無効や取り消しではなく、残債を帳消しにし、購入した物件の所有権は譲渡するという異例の解決となりました。