過労死した宅配ドライバーの佐川急便への損害賠償請求訴訟が事件から13年後に調停で解決

事案の概要

宅配の業務委託を受け、軽四貨物自動車(軽ワゴン車)で配送業務に従事していた男性が脳出血により死亡しました。
男性の死亡1か月前の労働時間は135時間であり、過労死の認定基準を超えるものだったとして、遺族は業務委託元の佐川急便に対し、安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求を求めて提訴していました(「過労死」と佐川急便を提訴 配送委託の遺族、4500万円損賠求め THE SANKEI NEWS 2019年11月27日)。

この訴訟について、調停が成立しました(佐川急便、遺族と調停が成立 宅配業務委託の男性ドライバーが死亡…大阪地裁 読売新聞 2023年2月10日)。

男性の死亡は2009年の9月ですが、調停が成立したのは2023年の1月であり、解決に至るまでには13年が経過しています。
本件では、今回調停で解決した訴訟以外にも、労災不支給処分の取消訴訟も提起されていました。

時系列
  • 2009/9
    ドライバーの死亡

  • 2010/3/16
    労災の不支給認定
  • 2012
    不支給処分取消等請求訴訟提起

    平成24年(行ウ)第196号不支給処分取消等請求事件

  • 2015/3/18
    不支給処分取消等請求訴訟の棄却

    男性の労働者性が否定され労災支給には至らず

  • 2019/10頃
    会社に対する損害賠償請求訴訟提起

    第1回口頭弁論実施は2019/11/27

  • 2023/1/13
    調停の成立

なぜこんなに争う必要があったのか

労災認定の問題があった

不支給処分と不服申立て

労働者災害補償保険法(労災保険法)の労災保険制度は、国が被災労働者または遺族に対し、業務上の自由によるまたは通勤の際の労働者の負傷・疾病・障害・死亡等に対する保険給付を行い、被災労働者の社会復帰の促進及び遺族の援護等を図ることを目的とする制度です(労災保険法1条)。

労災保険法にいう労働者は労働基準法上の労働者と同じ概念とされています。
男性は雇用契約ではなく業務委託契約で働いていたため、労災保険法上の労働者にあたらないとして、遺族からの遺族補償給付・葬祭料の支給申請に対して不支給の処分がされました。

労働基準監督署長による不支給決定に対する不服申立ては、審査請求、再審査請求及び取消訴訟により行います。
これは不支給決定を争うものであり、会社を相手とするものではありません。

行政不服審査法の施行に伴う労災保険法の改正により、現在は再審査請求を経ることなく取消訴訟の提起は可能ですが(労災保険法40条)、男性が不支給認定を受けた2010年当時は再審査請求に対する審査会の裁決を得た後でなければ取消訴訟は提起できないとされていました。

そのため、遺族は、審査請求、再審査請求の棄却を受け、不支給処分取消請求訴訟を起こすこととなりました。

不支給処分取消請求訴訟

遺族は、不支給処分取消請求訴訟にて、男性が労働者に該当すること、また、死亡の原因である疾病(脳出血)は加重な業務に従事したことにより発症したものであって業務起因性があることを主張しました。

労働者性について

労働者性は、単に事業者との契約が雇用契約か業務委託契約かというだけでは判断されるものではなく、具体的事案に応じて使用従属性があるといえるかどうかで判断されます。

訴訟では、双方から男性の勤務についての詳細な事実関係が主張されましたが、裁判所は、男性が業務委託元から指揮監督を受ける関係にあったとはいえず、報酬を労務提供の対価と見ることが困難で、事業者性が認められること等から、男性と業務委託元の会社との間には実質的な使用従属関係がなく、労働者に該当しないとして、結果として遺族側の請求は棄却されました。