過労死した宅配ドライバーの佐川急便への損害賠償請求訴訟が事件から13年後に調停で解決

民事での争い

安全配慮義務違反

行政訴訟で労働者性が否定される結論が出ると業務委託元に何の請求もできなくなるというわけではありません。

雇用契約がなく、個人事業主やフリーランスという立場でも、業務委託契約、請負契約といった形の契約関係があれば、契約相手に対して安全配慮義務違反を理由とした損害賠償請求の主張ができることがあります。

安全配慮義務とは、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきもの(最高裁昭和50年2月25日判決)とされています。

遺族側は民事訴訟で、委託契約の実態は労働契約の可能性が否定できない上、仮に労働者と評価できなくても会社の制服を着てあたかも同社の従業員であるかのような外観で配送業務をさせており、業務委託元の会社が男性への安全配慮義務を怠ったと主張しました。

成立した調停の内容の詳細は不明ですが、佐川側が解決に応じる内容とみられる旨報じられています。

最初から調停をしていたらよかった?

結果的に調停で解決することとなりましたが、最初から調停をしていたらもう少し早い解決ができたのでしょうか。

本件では、前段階の労災の不支給処分を争う処分取消等請求訴訟において労働者性が否定されており、安全配慮義務違反を争う訴訟で実態が労働契約であるという主張は容易に通るものではなかったと考えられます。
委託元の会社側も安全配慮義務の有無自体を争っていたようです。

訴訟提起から調停の成立まで3年と少しがあり、どの段階から調停に移行したのか等は不明ですが、双方の認識に大きく隔たりがあった事案のようです。
最初から損害賠償について調停ではなく訴訟を起こしたとしても、会社側が請求内容を認める方向で話し合いをする可能性は薄く、調停を先に起こしても不成立となり、訴訟を起こすこととなっていたのではないかと考えられます。