【文例4】隣家のエコキュート(家庭用ヒートポンプ給湯機)から出る深夜の運転音で不眠や頭痛に悩まされているので移設や防音壁設置を求めたい

事案の概要

消費者庁公開の「家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動により不眠等の健康症状が発生したとの申出事案」及び、群馬県の夫婦により起こされたエコキュート被害を理由とする損害賠償を求める訴え(2013年11月に隣家住民がエコキュートを撤去する内容で和解成立1)を参考とした事案における、隣家住民に民事調停を行う際の申立ての趣旨や紛争の要点、添付書類の一例です。

最近新築された隣家のAさんの敷地に設置されたエコキュートが深夜に運転音や振動を発しておりうるさいです。私の家の寝室に近いこともあり、不眠や頭痛に悩まされています。

睡眠薬を飲んでなんとか眠っている状態ですが、疲労感もあります。

移設や、移設が無理なら防音のための壁を作るなどの対処を求めたいのですが。

エコキュートによる低周波音については、健康症状を訴える方が多く、健康への影響について消費者安全調査委員会からも調査がされ、報告書等が公表されています。

また、一般社団法人日本冷凍空調工業会は据付ガイドブックを作成していますが、そこに記載されたポイントでは、寝室への音の影響を軽減するために寝室の傍は避ける等の間取りへの配慮についても言及されています。

移設してほしいとはこれまで何度かお願いしたのですが、設置したばかりなのでとAさんは聞いてくれませんでした。

調停を起こせば解決するでしょうか?

近隣住民同士のエコキュートの騒音に関するトラブルでの裁判所の判決は、調査した限りでは見つかりませんでした。

報道された事例も裁判となっていますが、判決にはならずに和解が成立しています。

今後も長い関係が続くお隣同士の問題でもあるので、調停によって解決できる可能性は高いと考えられますよ。

申立ての趣旨

相手方は、相手方住所地に設置したエコキュートを、申立人寝室から遠い場所に設置する、防音壁を設置するなどの、エコキュートの騒音や振動を低減するための措置を行うこと

紛争の要点

エコキュートの設置と騒音・振動の発生

私は、父の代から、今の場所に住んでいます。Aさんは、令和4年の3月に家を新築して引っ越して来られました。
新築の際に、Aさんは自分の敷地にエコキュートを設置しました。

Aさんが引っ越してきた翌月である4月ころから、私は、夜中にこれまでにはなかった音や振動を覚え、なかなか眠れないようになりました。
何が原因かと思い、家を出て確認すると、Aさんの設置したエコキュートから運転音や振動が出ていることがわかりました。

エコキュートのような家庭用ヒートポンプ給湯機は、深夜から明け方にかけて深夜電力を使って、ヒートポンプユニットでお湯を作るという仕組みらしく、そのため、夜間に運転音や振動が出るのです。

家庭用ヒートポンプ給湯器の据付けガイドブックでは、寝室の傍は避けるようにとも記載されていますが、Aさんの設置したエコキュートは、私の家の寝室から3mほどしか離れていない場所で、位置関係図のように、Aさんの敷地の中でも私の家に近い場所に置かれています。

エコキュートによる被害

運転音や振動は毎日のことなので、 私は毎晩不眠や頭痛に悩まされるようになりました。
また、気分が晴れない日が続き、心療内科に行ったところ、うつ状態であるとの診断書ももらいました。

今は市販の睡眠薬を飲んでなんとか眠っている状態ですが、日中の倦怠感や、疲労感が続いています。

交渉の経緯

私は、Aさんにエコキュートによる騒音・振動の被害を口頭で伝え、エコキュートの場所の移動を求めましたが、Aさんは、まだ設置したばかりで移設も大変だと、応じてくれませんでした。

話し合いでの解決ができないため、調停を申し立てました。

証拠資料

  • 診断書
  • 市販薬の領収書
  • 低周波の測定結果
  • 自宅寝室と隣家エコキュートの位置関係図
  • 家庭用ヒートポンプ給湯器の据付けガイドブック

脚注

  1. 報道記事(『エコキュートの音、健康被害に関与の「可能性高い」』 日本経済新聞 2014年12月25日)による。