【文例2】貸しているアパートの室内にごみをためこんでいる賃借人に出て行ってもらいたい

事案の概要

東京地裁令和4年5月16日判決(建物明渡等請求事件)をベースとした事案における、賃貸人から明渡しを目的とした民事調停を行う際の申立ての趣旨や紛争の要点、添付書類の一例です。
賃料の未払いも争点となりましたがこの部分は割愛しています。

賃貸人からは、ごみの放置が用法違反であるとして信頼関係の破壊があると契約解除や明渡等が主張されましたが、裁判所は信頼関係の破壊まではないとして契約解除を認めませんでした。

1棟アパートを所有して貸しているのですが、賃借人の1人であるAさんの利用状況がひどいです。

ドア前の共用部分に粗大ごみなど多くのごみをおいたり、室内も不衛生で汚く、ごみをためこんでいるようです。真下の部屋に息子が住んでいますが嫌がっています。

改善文書を出しても変わらないので、出ていってほしいと思っています。

賃借人には用法遵守義務があり、義務違反の程度がひどい場合には、賃貸借契約の解除をして明渡しを求めることもできます。

賃貸借解除するためには信頼関係が破壊されている必要があります。

ごみを理由に解除まで認められるかについては、ごみや悪臭の程度、健康被害、隣近所からの苦情の程度や、期間など様々な要素が問題となります。

健康被害とか虫がわくまではないですが、たばこの吸い殻がたくさんあるようでAさんの部屋の前を通るとたばこのにおいはします。

共用部分の粗大ごみはずっと置いてあるという状態ではないです。

裁判で信頼関係破壊が認められるか微妙な事案でも、民事調停で第三者を交えた話し合いをすることで、解決に向かえることもあります。

申立ての趣旨

相手方は、申立人に対して、別紙物件目録 1記載の部屋を明け渡すことを求める

紛争の要点

賃貸借契約

私は、所有しているアパートの別紙物件目録記載の部屋(以下ではAさんの部屋といいます)について、Aさんと、平成23年9月3日から賃貸借契約を結んでいます。

賃貸借契約には、次のような条項が存在します。

  • 賃借人は、貸室を善良なる管理者の注意をもって保全使用し、防火、防犯、環境の浄化を図るものとする。
  • 賃借人は、共用部分についてもその用法に従ってこれを使用し、これを不当に占有するなど賃貸人及び他の賃借人に迷惑を及ぼさないものとする。
  • 賃借人は、賃貸人が貸室管理上必要な事項を賃借人に通知した場合、その事項を遵守しなければならない。
  • 賃借人は、階段、通路、テラス等共用部分に私物を設置してこれを占有してはならない。賃借人は、管理者の管理上の指示に従わなければならない。

ごみの放置

Aさんは、入居直後から、Aさんの部屋にごみを溜め込み、掃除をせず不衛生に使用して汚損し、室外の共用部分にも粗大ごみや、燃えるごみなど大量のごみを放置しました。

平成24年頃に私が本件建物の玄関付近からAさんの部屋の中の状況を見たことがあるのですが、部屋全体が黒く汚れており、大量のごみが放置されていました。玄関正面のユニットバスの中はごみの山となっていました。
電気業者や水道業者が室内での作業をしたこともありましたが、Aさんの部屋を「とても人が生活するような部屋ではない。」と言っていました。

この時はAさんの母の協力を得てごみを撤去して清掃しました。

その後もAさんの利用方法は悪く、更新契約の際には、私や管理会社が予告なく立ち寄ってAさんと共に室内の点検(安全・清掃・ごみの処分等)をすることを承諾すること、階段部分・玄関アプローチ等共用部分にごみを出さないという特約を結びました。

Aさんの部屋の階下に私の息子が住んでいます。

息子は令和元年頃にAさんの室内点検に立ち会ったのですが、この時の状況について、「室内は異常に不衛生で汚く、多量のゴミが放置され、部屋全体が黒ずんで見えた。灰皿の上に煙草の吸い殻が山のように積まれ、煙草の煙などで悪臭が漂い、クロスもヤニでひどく汚れていた。フローリングの床も湿ってブヨブヨしているところがあった。」と言っています。

現在も、Aさんは、再び室内外に大量のごみを放置し、室内の掃除もせず汚くしていることが判明しています。

交渉の経緯

私は、Aさんと顔を合わせたときには、いつもごみを片付けるように言ってきました。
また、Aさんには、用法遵守義務に違反しており、速やかにごみを撤去するようにという注意の文書も度々送付しています。
しかし、抜本的な改善がされないままなので、出ていってほしいと思い、この調停を申し立てました。

証拠資料

  • 賃貸借契約書
  • 共用部や室内にごみが放置されている状況の写真撮影報告書(撮影日、撮影者、撮影場所を明記)
  • 息子の陳述書
  • Aさんに送付した注意の文書

脚注

  1. 不動産がからむ事案では、対象となる不動産を特定できるように、別紙物件目録として登記事項証明書の記載を参考に不動産の情報を記載します。