【文例6】近所の野良猫への餌付けをやめてこれまでの糞尿被害の慰謝料等を払ってほしい

福岡地裁平成27年9月17日（損害賠償請求事件）をベースとした事案における、隣家の住人に対する野良猫への寝床や餌を用意したり、餌付けをしないよう求め、損害賠償を請求する民事調停を行う際の申立ての趣旨や紛争の要点、添付書類の一例です。

判決は、隣家住人の行為で野良猫による糞尿被害が発生したことを認め、糞尿が相当程度の悪臭を発し、生活環境を害するものであり被害が長期間にわたること、隣家住人が行政指導を受けて近隣への迷惑発生を認識していたこと等の事情から、慰謝料50万円及び猫の侵入防止措置のための防護ネット代8100円、弁護士費用5万円の合計55万8100円の賠償義務を認めました。

なお、砂利の敷替や植木の植替費用は、写真から砂利の大部分が糞にまみれている状況は確認できないこと、糞尿により植木が枯れたことを認める証拠がないこと等から必要性・相当性が否定されていますが、その分慰謝料が増額されています。

隣の家に住むAさんが、野良猫に餌付けをするので迷惑しています。

親猫1匹と子猫3匹で4匹もいます。

隣なので、しょっちゅううちの庭にも入って来て、糞や尿をするのです。

隣近所という相隣関係では、互いに生活の平穏や権利利益を侵害しないように配慮することが求められます。

餌付けで野良猫が居つき、その猫が糞尿等で近隣に迷惑や不快感等、権利や利益の侵害をもたらすことがある以上、そういった迷惑が生じることがないように配慮することは当然求められるものです。

Aさんからは、餌やりはしているが、猫がそちらの家の庭に入ったりそこで糞尿をすることは、猫が勝手にしていることだから自分に関係ないことだと言われています。

野良猫への餌やりは、野良猫の生活に適した環境を整え、居着かせることにつながる行為です。

お隣の人が餌やりをしたことのほかに、野良猫が居つき糞尿をした原因がうかがわれないようであれば、因果関係の点はクリアできます。

申立ての趣旨
紛争の要点
証拠資料

【文例6】近所の野良猫への餌付けをやめてこれまでの糞尿被害の慰謝料等を払ってほしい

申立ての趣旨

相手方は、相手方住所地において野良猫に寝床や餌を用意するなどの飼育、餌付けを行わないこと
相手方は、申立人に対し金●円を支払うこと

を求める

紛争の要点

野良猫への餌やり

私とAさんは、隣同士の住人です。

令和3年5月頃、Aさんの家の庭で親猫1匹と子猫3匹の合計4匹の野良猫を見るようになりました。
Aさんが何度か餌を与えた親猫が子猫を産み、この4匹の野良猫は、6月以降、私の家の庭にも入って来るようになりました。

Aさんの家の玄関先に、この年の12月9日及び13日に、餌や猫の寝床のような段ボール・かごが置かれていました。
13日には、置かれたダンボールやかごの中に4匹の猫がいたことも確認できています。

行政機関の2度にわたる指導

私は、猫が家の庭に入ってくるようになった令和3年の6月20日、市役所に電話し、「Aさんの家で野良猫が子供を産み、親猫・子猫ともに近隣住民の家に侵入し、糞害で困っている」と苦情を申し入れました。

その日に市役所職員が、保険福祉事務所（保健所）の職員と一緒に、Aさんの家を訪問したときは、玄関先に餌入れがあるのを確認できただけでしたが、数日後の6月24日、改めてAさんに宅を訪問した際には、子猫がいたことが確認されています。
Aさんは不在であったため、後日となりましたが、保健所職員による指導が行われました。

しかし、Aさんはその後も4匹の野良猫たちに餌を与えるのをやめませんでした。
8月や10月、12月頃にもAさんが野良猫たちに餌を与えているのを私は目撃しています。

私は、8月15日、市役所に電話し、「Aさんが猫の屋外飼育を止めておらず，猫が庭に入ってきて糞をする」との再度の苦情を申し入れました。
また、10月15日には、自治会区長の名で、糸島市役所に対し、Aさんへの指導を要望する文書も提出されました。

これらの苦情や文書の提出を受け、市役所職員、保健所職員からAさんに指導が行われました。