特定調停とは?
特定調停は、債務の返済を続けることが難しくなった方が生活の建て直しを図るため、返済方法などを債権者と話し合うために設けられた民事調停の特例です。
特定調停も民事調停の一種で、裁判所の調停委員会のもとで、債務者である個人又は法人と債権者との間で話合いを行い紛争の解決を図ります。
調停委員会は、当事者双方の話を個別に聴取し、調整を図りながら調停を進めるため、特定調停を申し立てても、自分で債権者と直接交渉する必要はありません。
特定調停は、債権者に返済条件を変更してもらって借金を整理するという点で債務整理手続の一つである任意整理と共通します。
使えない場合もある?
特定調停は、今後も返済をしていくことを前提に、生活や事業の建て直しを図るため返済方法等を調整する手続きです。
そのため、支払不能に陥るおそれがない場合や、支払っていける目処が立たない場合、すでに破綻している場合などは特定調停の手続での解決はできません。
申立てに必要な資料
個人が特定調停を申し立てるにあたっては、以下のような資料の提出が必要となります(東京簡易裁判所での必要書類の例)。
書式や記入例等は裁判所のホームページから入手することができ、いずれも記入に専門的な知識までを要するものではありません。
- 特定調停申立書
- 財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料
- 関係権利者一覧表
- 申立手数料(収入印紙)
- 予納郵便切手
- 資格証明書(相手方が会社等の法人である場合)
特定調停はめったに成立しない?
特定調停について、司法統計等のデータで成立割合が低いことを理由として、申立てる意味がないという解説が散見されます。しかし、この説明はミスリードです。
特定調停の成立割合はたしかに低いのですが、調停に代わる決定(17条決定)がされる割合が過半数を占めており、取り下げで終了する事案も一定程度あるからです。
調停に代わる決定とは?なぜ多い?
調停に代わる決定とは、調停が成立する見込みがなく、相当であると認めるときに裁判所から出される事件解決のための必要な決定です(特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律22条、民事調停法17条)。民事調停法の17条によるものなので17条決定もといわれます。
決定に対して2週間以内に異義申立てがなければ、決定内容が訴訟の確定判決と同一の効力を持つことになります。
特定調停が成立せず、調停に変わる決定がなされる背景には、相手方の債権者が出頭しないケースが多いことにあります。出頭しないといっても特定調停の手続を無視するというわけではなく、調停委員会と電話で債務の確定や弁済の調整をした上で合意し、その合意の結果が17条決定とされる形が取られています。
調整を経た上でのものなので、通常は異議は出ません。
どうして取り下げがされるのか?
取り下げの理由としては、そもそも返済計画が立てられない、返済計画はたてられても非常に長期となる等から、自己破産の方が適当な事案であったことが考えられます。
このような場合、特定調停での解決はできないため、調停委員からは取り下げをすすめられることとなりますが、任意整理であっても同じ結論となった可能性が高いといえます。