調停の成立と調停調書について
調停の成立
民事調停では、当事者間に合意が成立するだけではなく、当事者間に成立した合意が調停委員会によって相当と認められ、これが調停条項として調書(調停調書)に記載されたときに、はじめて調停が成立したものとされます。
調停条項の決まり方
どのような内容で調停条項を決めて成立とするかですが、一般的には、申立人と相手方の間で支払う金額やその他の条件について共通の認識がまとまってきたタイミングで、調停委員会から調停条項案が出されるという流れとなります。
出された調停条項案の内容について不明な点等があれば調停委員会から説明を受けたり、意見があれば相手の意見も確認の上問題がなければ反映してもらうということもできます。
席上交付条項とは
民事調停を経て、一定金額についての支払い義務を相手が認める形で調停を成立させる場合、通常、調停成立から約1か月後を期限とする支払義務が相手に認められます。
これに対し、席上交付条項とは、特定の給付をすることが合意の内容とされた場合に、調停が成立した席上で、その給付を行い、給付を行った事実を調停条項として記載するものです。
具体的には以下のようなものです。
相手方は、申立人に対し、前項の金員を本調停の席上で支払い、申立人はこれを受領した。
席上交付をなぜ活用すべきか
調停が成立しても残るリスクがある
民事調停の成立には、双方が納得しているという前提があります。
そのため、成立した調停条項が後日守られないというリスクは、裁判で判決を得る場合よりも比較的低いです。
また、民事調停の調停調書の記載は、裁判上の和解と同一という強力な効力を有するため(民事調停法16条)、成立した調停条項に基づいて強制執行もすることができます。
民事調停を利用しない交渉で示談書を作成しても、このような効果はありません。
しかし、せっかく民事調停をやって調停が成立しても、相手が支払わない場合、強制執行という次の手続自体はする必要があり、これ自体が負担となります。
席上交付により履行を気にする必要がなくなる
席上交付をすると、相手が支払ってから調停手続が終了します。
強制執行をする必要がないのはもちろんですが、相手の支払の期限が近づくにつれて本当に支払ってくれるかを気にしたり、期限を過ぎても支払われないために催促をする必要もなくなります。
何百万円、何千万円となってくると、裁判所に持ち込んだり持ち帰る際の盗難等のリスクや、当日の席上でお金を数える際の事実上の煩雑さといった問題も出てきますが、調停の終了とともにすっきり問題を解決する1つの方法として、席上交付条項を盛り込んで解決できないかを成立が見えてきた際には調停委員にも相談してみてください。