家事調停と民事調停の違いとは?どちらを使えばいいかを知る

調停には、民事調停と家事調停の2種類があります。

家事調停とは

家事調停は、夫婦・親子・親族などの間のトラブルを取り扱い、家庭裁判所で行われるものです。以下の3種類に分けられます。

  • 親権者の変更、養育費の請求、婚姻費用の分担、遺産分割などの事件(家事事件手続法別表第2に掲げる事項に関する調停(別表第2調停))
  • 協議離婚の無効確認、親子関係の不存在確認、嫡出否認、認知などの事件(特殊調停)
  • 離婚や夫婦関係の円満調整などの事件(一般調停)

民事調停とは

これに対して、民事調停は、民事に関して紛争が生じたときに行われる調停です。
例えば、貸金の返還請求や不動産の明け渡し、交通事故、騒音や悪臭などの近隣紛争、損害賠償問題などといったトラブルです。

民事調停は、当事者の合意がある場合など一定の要件の下では地方裁判所でも行われますが、主として簡易裁判所で行われます。家庭裁判所では扱われません。

民事調停とは異なり裁判では、紛争の目的の価額で地方裁判所か簡易裁判所かが決まります。価額が140万円以下の問題は簡易裁判所で扱われ、140万円を上回る場合は地方裁判所が扱います。
民事調停の場合はこのような一定金額での振り分けはされておらず、紛争の目的である価額が高くても簡易裁判所が扱うことができます。

家事調停?民事調停?

どちらにも当てはまりそうな問題

家事調停にも、民事調停にも当てはまりそうな問題があります。たとえば、親族間における、貸金の返還問題や不動産の明け渡し問題です。

こういった場合は、家事調停と民事調停のどちらを使うとよいのでしょうか。

親族関係調整調停

どちらにも当てはまる問題は、簡易裁判所の民事調停で扱うこともできますが、家庭裁判所の調停を利用することもできます。親族関係調停調停という手続です。

これは、親族間において、感情的対立や親族の財産管理等に関する紛争が存在するなどして親族関係が円満ではなくなった場合に、円満な親族関係を回復するための話合いの場です。

親族関係調整調停を申立てることができるのは、相手方と法律上の親族関係にあるものに限られます。

ここにいう親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のことをいいます。
ある人が自分の何等親かというのは、自分とその人との同一のルーツをさかのぼった場合に、何人がいるのかということで判断できます。
あなたにとって、父母や子は1等親、祖父母や孫、兄弟姉妹は2等親、おじおばや甥姪は3等親となります。

親族関係調整調停のメリット・デメリット

手数料が安い

民事調停ではなく親族関係調整調停を利用することのメリットとしては、申し立てる際の手数料が一律で1,200円と比較的安いことが挙げられます。

民事調停の場合、20万円までの問題を扱う場合は手数料が1,000円でよいのですが、30万円以上の問題を扱う場合(1,500円~)や、価額が計算できない問題の場合(6,500円)には、手数料が親族関係調整調停を利用する場合よりも高くなります。

配慮を期待しやすい

また、家庭裁判所の管轄となるため、担当する調停委員会も、家庭におけるデリケートな問題を扱うことに比較的長けており、解決を考えるにあたって親族間であるゆえの配慮を民事調停よりも期待しやすいといえます。

専門家委員はいない

デメリットとしては、民事調停では、専門知識を有する調停委員が関与して適切な助言をしてくれることもありますが(参考:民事調停とは?弁護士をつけなくてもできる解決手段の一つ!)、家事調停では、こういった専門家調停委員の関与はないということです。

そのため、親族間であっても、家賃の増減額や売買した不動産の建築瑕疵など、不動産鑑定士や建築士といった調停委員の専門的知見を仰ぎたいような問題では、親族関係調整調停よりも民事調停の利用がより目的に沿うと考えられます。