本サイトでも以前に紹介したものですが、スマホでもできるオンラインでの紛争解決実証事業を昨年日弁連が試験的に実施していました(現在は終了)。
実施結果についての報告書が法務省WEBサイトに掲載されています。
手続き期間等
オンラインでの手続の平均期間は、大半がチャットでの手続完結で、法律相談が21.7日、調停が64.1日でした。
2か月程度でオンラインのみで手続が解決するのであれば現行制度よりも簡便で使い勝手が良いものといえそうです。
低い応諾率
しかし、調停の応諾率は低いものにとどまりました。
令和5年の9月1日から12月8日までの実証事業期間中になされた法律相談の申込みは171件で、調停の申立ては55件でした。
注目すべきは調停の申立て55件のうち、調停が成立したのが7件、不成立となったのが47件で、うち不応諾が38件だったいう点です。
つまり、55件のうち、解決したのは55-38=17件(30.9%)ということです。サンプルとなる母数は少ないとはいえ、圧倒的に裁判所による民事調停や、弁護士会の実施するADRの応諾率よりも低い水準です。
低い応諾率の原因分析と対応策
応諾率が低いものにとどまった原因については、報告書の末尾で、
- 無料法律相談からオンライン上で移行でき、申立てに伴う煩雑さが低い調停申立て、かつ、手数料が無料である調停申立てであることにより、調停成立の見込みが低いもの(案件の性質としては調停成立の見込みがあっても応答する見込みが低いものを含む)も、積極的に申立がなされた可能性がある。
- 不応諾によるデメリットが皆無に近い。
というような分析がされています。
また、そもそも応諾・不応諾のために送付されたメール中のURLがクリックすらされていない件も相当数あったようです(この点を解消するために日弁連の事務局が稼働し、書面を送付する等はしたようですが、この際に生じるコストの負担をどうするかという別の問題が出てきました。)
まだまだ全国的に実施するには難しそうですが、オンラインで完結する紛争解決は相当に便利で魅力的な手段です。
民事裁判手続も時間をかけて少しずつIT化が進んできました。本実証事業の目的は、効果や課題等を分析・検証してODRの社会実装を促進するためということですので、今後もODRに何らかの動きが出てくることが期待されます。