民事調停に向く事件
相手方との関係が今後も継続し、将来においても友好な関係を構築していきたい事案は、裁判よりも民事調停に向く類型といえます。たとえば以下のような事案です。
- 近隣トラブル
- 遠い親族同士の貸金などの民事トラブル
- 子どもの同級生同士のトラブル
- 継続中の賃貸借契約関係のトラブル
根拠となる法令がない、たとえばゴミ置き場の設置場所といった問題もそうです。
法令がないため裁判で解決することは難しいですが、調停であれば、調停委員会が具体的な状況をみてよいと考えられる案を提示してくれたり、当事者間での話し合いを推進してくれることで実態に合った解決を探れます。
損害賠償を目的とするより、気持ちをわかってほしい、謝ってほしい、再発防止をしてほしいという点を主眼とする医療・介護事故なども、謝罪や再発防止など周辺問題を含めた柔軟な解決の可能性がある調停になじむでしょう。
専門家の意見を聞いて判断したい事件も民事調停に向きます。
建築紛争や医療事件は、裁判を起こそうとすると、専門知識が必要とされることから、受けてくれる弁護士は限られており、費用も通常の事件より高額となりがちです。特に医療訴訟は訴えを提起した原告が判決になったときの負ける確率が8割程度と、普通の訴訟よりも圧倒的に認容率が低く、賠償が認められにくいという実情があります。
しかし、民事調停では、専門家調停委員が事案の整理をしたり、問題点を明らかにしてくれ、これにより解決に至るということがあります。
民事調停にデメリットは?
このように良いところが多い民事調停ですが、万能ではありません。民事調停には向かない事件も存在します。
民事調停は、相手と話し合いで解決をする手段です。相手が調停の場に出頭しないと、話し合い解決ができずに、調停が成立しない(不調)となってしまうことがあります。
東京簡易裁判所における令和3年の民事調停事件の終了事由をみると、調停の成立や、17条決定(調停委員会が調停が成立する見込みがない場合で相当と認める場合、調停に代わる決定を出すことができるという制度)による紛争解決率は60%程度です。
そのため、以下のような事案については、民事調停を利用して解決することは現実的ではありません。
- 相手の所在がわからず呼び出せない
- 相手が認知症だったり、精神疾患が疑われるなど、解決のための合理的な話し合いが困難な状態
相手方が民事調停の期日を欠席した場合、担当書記官からは電話連絡等で、裁判所に来て話合いをしましょうと説得をしてくれます。
話し合いに応じられない事情があるなら、その考えを直接言ったらどうか等、出席に向けた働きかけもしてくれます。
民事調停は、泣き寝入りする前にやってみて損のない手続きといえます。
裁判所ウェブサイトから入手した雛形は、宛先が自分の事件の管轄とは異なる裁判所宛のものになっていても、宛先だけ書き換えて使うことができますよ。