平日日中の民事調停出席が難しい場合は夜間や休日にも開催される弁護士会ADRを検討しよう

費用面ではデメリットがある

弁護士会ADRは非常にすばらしい制度ですが、利用にかかる費用は民事調停よりも高額となることが多いです。

民事調停でも申立手数料が必要ですが、弁護士会ADRの場合は、申立手数料に加えて期日手数料、成立手数料が必要となります(なお相談内容によっては、鑑定料、出張交通費、日当等の実費が別途必要となります。)

民事調停は裁判所の制度であり税金で運営されていますが、弁護士会ADRを運営しているのは弁護士会であり、制度の運営費用としてはどうしても一定の手数料を徴収する必要があるからです。

以下では、東京弁護士会のADRを参考に説明しています。
他の弁護士会のADRの利用を検討される場合には、事前に各弁護士会ADRのホームページ等にて確認をお願いいたします。

申立手数料

11,000円(税込)

調停では申立事項の価額により手数料が変わりましたが、東京弁護士会のADRでは、申立事項の価額にかかわらず申立手数料は一律11,000円とされています。

ただし、東京弁護士会の法律相談センターで法律相談を受けた場合は、5,500円(税込)とされています。

期日手数料

申立人も、相手方も、あっせんの期日ごとに期日手数料として5,500円(税込)を支払う必要があります。

申立手数料や期日手数料は、申立事項の価額が少額であっても必ずかかってくるものなので、数万円の事件を自分で解決したいという場合、弁護士会ADRは選択肢としては選びづらくなります。

成立手数料

あっせん、仲裁により問題が解決した場合は、解決額によって以下の表により定められた一定の成立手数料を払う必要があります。
不成立となった場合は支払う必要がありません。

解決額(P)成立手数料(消費税込)
~300万円P×8.8%
300万円~1500万円26.4万円+(P-300万円)×3.3%
1500万円~3000万円66万円+(P-1500万円)×2.2%
3000万円~5000万円99万円+(P-3000万円)×1.1%
5000万円~1億円121万円+(P-5000万円)×0.77%
ただし、学校問題ADRについては、最低成立手数料は11万円(税込)。
東京弁護士会ホームページ

民事調停にない成立手数料の負担は一見すると重いようにも思えます。

しかし、弁護士を依頼すると着手金・報酬金を支払うこととなりますが、成立手数料は、多数の法律事務所で採用されている旧報酬規定の基準と比べても半額以下となっています。

また、成立手数料は必ず申立人が全額負担することとなるわけではなく、申立人と相手方のどちらが負担するかは、当事者の話し合いまたはあっせん人、仲裁人の決定により定められます。

そのため、弁護士をつけずに自分で解決を考える場合、弁護士会ADRは民事調停にはないメリットを持ち、有力な選択肢といえます。

具体的な金額の例で計算

たとえば、金融ADRを利用し、3回の期日で500万円が支払われるという解決となり、成立手数料を申立人・相手方で折半することとなった場合、

申立人の負担する額は、

11,000円(申立手数料)+5,500円×3(期日手数料)+330,000円÷2(成立手数料)
=192,500円となります。

仮に申立人が成立手数料を全額負担することとなった場合は、357,500円です。