本人訴訟をするなら民事調停を考えてみよう(特に地裁)

よくある誤解

裁判所から手続を教えてもらえるのでは?

弁護士をつけずに裁判したからといって、裁判所があなたの側に不足している主張や証拠について親切に教えてくれるということはありません。
公正、中立な立場にある裁判所は、一方の当事者だけに有利となるようなアドバイスを行うことはできないからです。

また、裁判の期日というのは、双方が主張や立証を行い、裁判所が審理を進めてゆく場であり、決して裁判官が当事者に裁判手続や法律についてレクチャーする場ではありません。こういったことを裁判所に期待すべきではありません。

どのような主張や証拠が適切なのか、また裁判所から次回期日の前までに提出するように出された課題をどうしたらいいかわからないような場合、早期に弁護士に相談することが必要でしょう。
本人訴訟では、裁判所の方から、弁護士をつけるようにとすすめられることも少なくありません。

裁判官は全てを見通してくれるわけではない

また、裁判官は真実を全て見通してくれる存在ではなく、法廷であなたの言い分をじっくりと聞いてくれることも通常ありません。

裁判は、正義や真実が勝つのではなく、法的な主張・立証ができている方が勝つという仕組みで運営されています(そもそも一方にとっての正義や真実が、他方にとっては違うということもあります)。
相手が仮に嘘をついていたとしても、あなたの主張や証拠が法的にみると不十分だった場合は、あなたが負けるということも十分ありえます。

民事調停なら自分でできる!

民事調停では、話し合い解決の手続きなので、裁判のように法的な主張・立証を厳密に求められるということはありません。
弁護士をつけずに本人が行うことを想定した手続きなので、法的な知識がなく人生で初めて裁判所に行く方も十分利用することができるものです。

目的物の価額が140万円を超えて、裁判では地裁が管轄となり、弁護士をつけることが望ましい事案でも、弁護士をつけずに自分で対応できます。

民事調停で解決できない場合は弁護士の活用も考えよう

とはいえ、事件によっては、民事調停が不向きだったり、民事調停を起こしたが不成立となったり、17条決定に対する異議が出るなどして解決しない場合もあります。

そういった事件については、本来勝てるはずの事件に負けてしまうというようなことがないよう、やはり可能な限り弁護士に依頼したり(特に地方裁判所の事案)、少なくとも早期に相談するということが望ましいでしょう。

一審で負けて事の重大さを認識して急いで弁護士に依頼しようとしても、控訴審から引き受けてくれる弁護士を見つけること自体が難しかったり、運良く見つかっても結論が変わらなかったということとなる可能性もあります。

これは、控訴審からの主張や立証がそもそも民事訴訟法の定める時機に遅れた攻撃防御方法(民事訴訟法156条)と判断して裁判所から却下される可能性があることや、控訴審では多くの事件が第一回期日で終結してしまうこと等が理由です。